著者:
西日本初ほうれい線治療専門クリニック
大阪Houreisen美容皮膚科院長
ヒアルロン酸ジュビダームビスタ/バイクロスシリーズ注入認定医師
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ここではヒアルロン酸注射により失明する可能性とその対処方法について解説したいと思います。
ヒアルロン酸注射といえば、全国の美容クリニックで盛んに行われている施術です。
「それなのに、本当にヒアルロン酸注射で失明のような恐ろしいリスク・副作用を起こす可能性はあるのですか?」
と聞かれることがありますが、答えはYESです。
目次
実際にヒアルロン酸注射で失明を起こす可能性はある
ヒアルロン酸はゼリー状のもので、液体ではありません。
ゼリーが誤って顔の血管に入ってしまうと、血管を詰まらせる可能性があります(血管塞栓)。
眼球の血管(眼動脈)が詰まり、視力に関わる網膜細胞への栄養が滞ってしまうと、視力が低下し、失明します。
実際に症例報告はあります。
美容整形目的で鼻背へヒアルロン酸注射後に眼動脈閉塞を来した1例
リンク先:日本眼科学会雑誌
ヒアルロン酸注射で失明のリスクが高い部位
これまでの症例報告で多いのが、鼻です。
それに続いて眉間、額、ほうれい線となります。
血管はネットワークを形成し、枝分かれしてつながっているので、眼球近くの血管でなくても、失明する可能性はあります。
ヒアルロン酸により失明が起きるタイミング
ヒアルロン酸が眼動脈を詰まらせると速やかに症状が起きます。
血液が流れる速度はとても速いので(持続200kmで新幹線並みとも言われています)、ヒアルロン酸注入直後に起きます。
視力障害の症状以外に、眼痛や吐き気、頭痛、発汗といった症状も見られることがあります。
ヒアルロン酸で失明した際の対処方法
失明に対する対処方法としては、可及的速やかにヒアルロン酸溶解剤の注射、患部を温めて血管を開かせて血流を促すこと、マッサージなどがあります。
しかし、実際にはこれらの処置を行っても、一度失明を起こしてしまうと回復しないことの方が多いです。
ヒアルロン酸による失明のリスクを下げる工夫
一度失明してしまうと、なかなか回復が難しいのが現状です。
なので、いかに失明を起こさせないか、血管内に誤注入しないかが重要となります。
実際に、注射時に失明を起こさせないように工夫を凝らすことはできます。
私もヒアルロン酸注入時は、
- 注入時に逆血をしっかりと確認する(血管内に注射針が入っていないかの確認)
- ヒアルロン酸を注入する際はゆっくり慎重に行う
- 血管を傷付けにくいカニューレ針を使用する
- そもそも危険部位には注入しない
と手技的に十分に気を付けており、今のところ失明を起こした方はいらっしゃいませんが、だからといって100%大丈夫ですとは言い切れません。
実際、失明を起こしている症例を分析すると、治療経験豊富なドクターが担当している方でも起こっているそうです。
一つの原因としては、血管の走行は人によって個人差があり、解剖の教科書で学ぶ走行とは全然異なる走行をしている場合があるためです。
なのでいくら解剖を熟知して気を付けて注入していても、血管を傷つけてしまうリスクがあります。
まとめ
非常に稀ではありますが、ヒアルロン酸注射によって血流障害を起こし失明するリスクは実際にあります。
他にも皮膚の壊死につながるリスクもあります。
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